鏡よ鏡

□1滴
1ページ/3ページ









目に映ったのは鮮やかな緑。日本の現代社会にはあまりない、澄んだ空気と野生動物の呻き声。
視覚、嗅覚、聴覚が敏感に感じ取ったそれと、人の気配が全くないこの環境がとても怖かった。蹲りながら、突然訪れた死への恐怖感に苛まれる。

知らない場所。知らない世界。非現実的な、この体。
特典なんていらなかった。頭に直接入ってきた知識は条件付きだという魔術の使用方法。
どうして私だった。どうして帰り方は教えてくれなかった。どうして、わたしはここにいる。



(こんな、からだ。帰った時どうしてくれんのよ)



きもちわるい。ファンタジーなんてくそったれだと思っても、なんにも変わらない綺麗で恨めしいこの景色。
帰れるかどうかも分からない。だからいっその事、その魔術で全部破壊してやろうかなんて物騒な事を考える。

そう。それほどまでに。私は当初、この世界が大嫌いだった。









.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ