生と死の境界線

□T
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懐かしい色、懐かしい声。それを垣間見た瞬間景色が一変した。
もう少しで帰れたのに、どうして引き離されたのか。
カミかハナか、それともウタか。どうせまた強大な力が働いたに違いない。
何にせよ、今更そこに戻れた所で私は酷く歪んでしまったのだから、普通の生活なんぞに戻れるはずもなく。


「日本は懐かしいんだけど、」


ふと過るのは呪われてしまった自分の体とどうしようもなく下品で非道な仲間達。
殺戮を繰り返し、性欲に溺れてはまた血に塗れ狂いウタう。
それでも楽しかった。暖かかった。彼女達の傍は、あの世界で唯一安心できる場所だった。

最後に見えた数匹の白い鳩と悲しそうな白い彼女の顔が忘れられない。
柄にも無く泣きそうで、それでいて満足そうな表情で逝ったあの人を、もう二度と見る事はないのだろう。


私を殺した白いウタヒメが守った世界。
分岐は沢山あるけれど、願わくば人類滅亡のルートは辿りませぬように。





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