特別部屋

□雪の溶ける温度
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冷たい風が吹く。外気は果てしなく冷え込み、体感温度はかなり低い。
厚手の服を着ても寒さには耐えられないだろう。
なにせ、ここは一面、雪の銀世界――ノークインなのだ。
今日はいつもと違い、地元の者でさえ堪える寒さ。そんななか、ダイヤモンドダストが見れると聞き、飛び出した一人の人物だけが里の外にいる。
「うう…さ、寒いよぉ…。でも、だいやもんどだすととか言うのが芸術家の心に反応するんだよねぇ」
ベリルだ。
厚手のモフモフした襟のついたコートを着て、キャンバスを持って外に出ている。
「…この辺りがいいかな?」
キャンバスを選んだ場所に置き、絵を描き始める。
ダイヤモンドダストは運良くベリルの画題になるかのように、発生していた。
描き終える頃、役目を終えたかのようにダイヤモンドダストは消えていった。だが、ベリルの絵は写真のように風景を描いている。
「上出来だね〜」
本人も納得のいく作品だったらしく、嬉しいそうに笑顔で雪を踏みしめ、足跡を残し遊び始める。
誰もいない外にある雪を一人で支配する。
「転ぶぞ」
突然、ベリルの肩に冷たい手が乗せられる。
冷たい手は隙間から見えたベリルの肌に触れたため、
「ひ、ひ、ひゃあ〜!!」
ベリルにそれなりのダメージを与えた。
「く、クンツァイト!!突然やめてよ!!冷たいじゃないのさぁ!!」
振り向くと、ベリルが想像した通りクンツァイトが立っていた。外は寒いというのに何も着込んでいない。
「クンツァイト…寒くないの?」
「自分にはそのようなものはない。寒いと感じることはない。機械だからな」
それを証明するかのように、クンツァイトの頬についた雪は、溶けずにはりつく。ベリルの頬についた雪はゆっくりだが溶けていく。
「…そっか…そうだったね。ごめん…」
「何故ベリルが謝罪する。不明」
「だって…クンツァイトは機械なのに…なんか…」
「否、自分は大丈夫だ。そのような感情は無い」
そっか、とベリルは少し寂しそうに俯き呟いた。
今、目の前にある美しい銀世界にさえ何も感じない。寒ささえ。そして、ベリルが感じているクンツァイトに対する好意さえ感じないと思うと、悲しくてしょうがなかった。
「ベリルが悲しむ事はない。機械人の自分には不必要だ。主を守るための目的で造られた機械人にはただの荷物になるだけだ」
慰めたつもりなのだろう。だが逆にその慰めがベリルを追い詰めていく。
自分がクンツァイトに抱いている感情は、相手には邪魔だと言われるのと同じ意味。知らないうちに胸は黒い物で覆われる。
「どうせ…」
「なんだベリル?」
「ボクの気持ちなんかクンツァイトには迷惑なんだ」
ぽつりと口から溢れた言葉と同時に、目からも涙が溢れ落ちる。
真っ白な雪の上に落ちた涙は、すぐに消える。
「ベリル…?」
「ごめん…なにもないよ」
「話してくれ。否、説明を要求する」
「もういいから…」
これ以上クンツァイトと二人でいたら、自分の心の傷がどんどん深まると思ったベリルは、その場ら立ち去ろうとする。
「ベリル…!!」
だが、それはクンツァイトの叫びにより阻止された。
こんなにクンツァイトがベリルを感情がこもった呼び方をしただろうか。
「え…」
振り向きざまにクンツァイトの腕の中に包まれ、抱き締められた。
硬い装甲にコツンと額が当たる。
「ベリル…一つ言うのを忘れていた。自分のスピリアは、温かさは知っている」
そう言うと、ベリルを一層強く抱き締める。
「い、意味が分からないよ?」
「自分にも意味が分からない。だが、分かるのだ、この温かさは…ベリルに対してしか感じない温かさを…」
ちらつく雪はクンツァイトの頬に舞い降りる。さっきと違い、雪は溶けた。
「あ…」
ベリルが驚きの声をあげたが、クンツァイトには届かない。
届かなくても、二人の気持ちは同じになった。
ベリルもクンツァイトの背中に精一杯手を伸ばし、抱き締める。

雪が溶ける温度それは――














――二人の気持ちが重なったとき。

**********************************************キリリク完成しました!!
あ、甘いのか、これは!?
なんだか中途半端になってしまいました…。
この小説は、神崎翔様に捧げます!!


::::::::::
か、可愛い・・・なんですかこの二人!!
すれ違いつつも最後は、重なって・・・
甘いですよ!!切ない甘さです!!
ちょっと読んでてベリルに共感してしまいました・・・
よくやった、クンツァイト!!!

意味不明なことをすみません、キリリク書いて頂き有り難うございました!!!
 

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