記念もの。

□やさしい物語 Ver.望美
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…――雨の音がする。











重力に逆らわず、地にたたき付けられ泣いているような音。水同士が擦れ合い奏でる旋律に空虚さを感じ、はたまた充足感を得る。


私はどうしてしまったのだろう。


いつまでも後ろ姿を捜していくと…追い掛けると決めていたのに。


「あなたはもう、――――…。」


続いた言葉も一時的に強まった雨足に掻き消され、洗い流されもしない醜いだけの願いが体を巡る。

雨。
"先程感じた熱さ"とは正反対と言える寒さ。体の芯から冷え、凍らせてしまいそうなそれに打たれいつまで空を見上げていたのか分からない。いつまでもこうしていたってどうにもならないと、昔の私はすぐ気付くのに。


「あーあ。こうまでもショック、大きいかな…」


泣いて叫ぶ気力も潰えて思ったより淡々とした呟きに寂しくなる。

人が死ぬ様を見続けてしまえば、命の終わりなど何の起点にもなりはしないと気付いてしまった。だからか、例え仲間の死が訪れてもそれはかとなく…受け入れた自分がいた。


信じたくない、
けれどあの場所、あの時空は。
"戦場"という、いつ命が絶えてもおかしくないところで。





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