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□僕がナナリーだ!!-call my name-
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彼の声は、とても心地良く、落ち着く。
もう、優しく『スザク』なんて呼ばれた時には満面の笑みで振り向いてしまう。
しかし。
やっぱり彼女には敵わないのだ…。
あのナナリーには……。
「なぁ、スザク?」
「ふぁい?」
「ん、なんだ?その間抜けな声は。…熱でもあるのか?」
「あ、いや。違うんだ。ちょっと考え事を…。」
「ふーん?」
熱は熱でも、僕は君にお熱だけどね!!
キャ、恥ずかし…っ///(お前がな)
「…あ、それでな、スザク。お前今日は軍の仕事が無いって言ってたよな?だから…その、うちに泊まりに来ないか?」
「え!?いいのっ?」
「あぁ、もちろん。」
「やった!うん、行くよ!!」
…き、キター!!
ちょ、見てた?見てたよね!?フラグ立ったよね!!
やったよ、僕!今夜は赤飯だ!!(なんで)
「そうか、良かった。ナナリーが喜ぶよ。」
『ナ ナ リ ー が』
…ちーん…。
ふ。いいんだよ、ルルーシュ。君は全校生徒が、…いや。全視聴者が認めるスーパーシスコンお兄ちゃんだものね…。
僕は君のそんなトコも大好きさっ!!
─そんなこんなで(?)放課後、僕はルルーシュ達の家のクラブハウスへとやって来ました。
「あっ、おかえりなさい、お兄様!!」
「ただいま。ナナリー。それと、今日はスザクがうちに泊まれるらしいから。良かったな。」
「あれ…?軍の方は大丈夫なんですか?」
「うん。今日は休みなんだよ。」
「そうなんですか…。」
…あれ!?
声のトーンが下がってるよ、ナナリー!?
き、気のせい…?
「そうだ。せっかくだし、今日は俺が夕食を作るよ」
「あ、なら僕も手伝うよ」
「あのな…。今は俺がもてなす側なんだから、お前は休んでろよ」
「そ、そう?分かったよ」
「あぁ。待っていろ。最高の料理を作ってやるから」
そう笑顔で言って、ルルーシュは鞄を置くなり台所へ向かって行った。
僕は特にする事も無くて、椅子に座りナナリーにある素朴な疑問を投げ掛けた。
「ねぇ、ナナリー。君はさ、ルルーシュが名前を呼ぶとき、僕と君だったらどっちの方が優しい声で呼んでると思う?」
「え……?…そうですね、やっぱり…私、でしょうか。」
…わー。結構キッパリ言うんだね。
確かにそうだけどさ…!!
「ね、ねぇ、ならどうやったらルルーシュが僕にも優しい声で呼んでくれるかな?」
「そうですね…。あ!!そういえば、この前リヴァルさんがお兄様は妹属性に弱いとかって言ってましたよ」
「り、リヴァル…。妹属性、か…。何すればいいんだろう?」
「あ、私、少し大きめ中等部の制服を持っていますので、それを着て年下の女の子になりきってみたらいかがですかっ?」
「え?でも、ナナ…」
「待っていて下さい!今、持ってきますから。」
「ちょ、待…っ…」
なんでそんなにノリノリなんだっ!!
「持って来ましたよ、スザクさん。」
…って、速っ!!
「ね、本当にやるの?」
「えぇ、当たり前です。お兄様の優しくて甘いお声が聞きたいのでしょう?」
「う、うん。」
…でも、ナナリー。
笑みが黒いよ…!?
「それなら、早く着てみて下さいっ!きっと似合いますよ。」
「分かったよ…。」
そして僕は中等部の制服を着る事になってしまった。
いいもん、いいもん!軍の余興で慣れてるし!!スザ子モードでなりきってみせるからっ☆(壊)
「…まぁ!!お似合いですよ、スザクさん!」(何故見える)
「そうかな〜?」
と言っても、やっぱり制服は小さく、ピチピチの上に少し長めだったスカートはミニスカートになってしまっている。
「それでは、スザクさん。お兄様は(多分)髪の長い人が好きと訊いたので、これをかぶって下さい!」
か、かつら!!!
「え、あ…うん。」
ふさっ…。
「ピッタリですね(だから何故見える)!!これでお兄様もときめいて優しい声で名前を呼んでくれるでしょう!!…試しに『私はナナリーです』って言ってみて下さい。」
「わ、分かった。………ゴホン…。……私はナナリーです。」
「まぁ!!素晴らしい裏声!これでお兄様もイチコロですね!」
「…うん。」
あれー。
僕、自分の名前を呼んで欲しかったはずだったんだけどな…。
まぁ、いいや!ルルーシュのあの美声を聞けるのなら!!(いいのかよ)
「んじゃ、ナナリー!僕、ルルーシュのトコに行ってくるよ!!」
「えぇ!頑張って下さい!私は陰でこっそり応援してますから!(ぇ)」
よーし!!頑張るぞっ!
枢木スザク、行きます!!
「お兄様ぁっ!!」
「ほ、ほぉあぁ゙!?す、スザク!!なな、何だその格好は!?」
「違います!!お兄様ぁ!スザクじゃないですぅ!私はナナリーです!!」
「嘘をつけ!!ナナリーは立てないし、目も見えない……。大体!ナナリーはそんなにガッチリしてないぞ!!」
「ヒドイッ!女の子にガッチリなんて!!」
「…はぁ…。何が目的だ、スザク。女装にでも目覚めたか?」
「…ぼ…僕は…。」
「うん?」
「…僕は、君に名前を呼んで欲しかったんだ!!」
「は?」
「だって君、いつだって僕よりナナリーを呼ぶときの方が優しい声じゃないか!!」
「お、お前な…。つまり、ナナリーに嫉妬してそんな格好したのか?」
「うん。」
(な、なんか犬みたいだな…。)
「…俺はお前の事だって大切に思ってるぞ?」
「本当に?」
「あぁ。本当だ。…大丈夫。俺はお前の事、ちゃんと好きだから。」
そう言って、ルルーシュは僕の手を握ってくれた。
「スザク…。」
「っ!?」
ルルーシュは、本当に…本当に優しい声で僕の名前を呼んでくれた。
「…ルルーシュ…っ!!」
「わっ!!馬鹿!急に抱き付くな…っ!料理が出来ないじゃないか!」
「少しだけ!」
「し、仕方ないな…っ!そのかわり、焦げたらお前のせいだからなっ…!!」
「うん!!分かってるよ」
…ねぇ、ルルーシュ。
これからも、僕にその声を聞かせてね。
例え、怒った声でも、呆れた声でもいいから、僕の名前を呼んで欲しい。
…だってね、僕は君が本当に大好きなんだから…──。
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