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□愛しい朝
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朝、僕はルルーシュの部屋の前にいた。
ルルーシュは持ち前の頭の良さから総督になり、僕はルルーシュの推薦から騎士になった。
でも、内心は少し複雑。
ルルーシュに推薦された時は凄く嬉しかった。……けど、ルルーシュが担当してるのはエリア11。日本。…そして、僕の祖国。
ルルーシュは周りの反対を押し切って日本を解放しようとしてくれるけど、僕にはそれが不思議でならない。
─コンコン
雑念を払い、ドアをノックする。
(もう起きてるよね…)
「ルルーシュ様?」
返事がない。おかしいな…。
「ルルーシュ様?入りますよ?」
─ガチャ…
「あ…れ…」
白と黒を基調とする広い部屋の中にルルーシュはいた。けど…
(寝てる?…珍しいな。)
起こそうとベッドに近付いてみる。
「ルルーシュ様?」
「………」
起きない。
…まぁ、いいか。会議にはまだ3時間もある。
ふっと、寝顔を覗いてみる。
艶やかな黒髪に白い絹肌。綺麗な紫色の瞳は、今は伏せられている。
(可愛いな…)
女の子みたいなその容貌に、思わず口元がにやけてしまう。
頬に触れてみる。
温かい。
いつもは遠く感じるルルーシュも、今は近く感じる……。
「…ん…スザ、ク?」
「へ?」
起こしてしまったようだ。
「あっ、すみません…。」
自分がルルーシュの頬に触れていた事に気付き、謝る。
「いや…、いい。このままで。」
「え?」
…えぇ!?
い、いい今なんて…?
動揺して手を離してしまう。
「…離すな。」
「ふぇっ!?」
ななななな、るる…る、ルルーシュ!?
寝惚けて、ナナリーと間違えてるのかな??
いやでも、さっきスザクって呼んでくれたし…。
「スザク」
「は、はいっ!?」
ドキリ。
な、何故かルルーシュは潤んだ声で僕を呼んだ…。
「あの…ナナリーはいるか?少し用があるんだが…」
「……」
ポカーン。
やっぱりナナリーか…。
あははー。このシスコン皇子様には敵わないよ…。
「ナナリー様ならご自室にいらっしゃいます。」
期待させた分、少し棘々しく言ってやる。
「分かった。ありがとう。」
「いえ。」
するとルルーシュはベッドから起き、すぐ近くのナナリーの部屋へと向かおうとする。
ふん、そうですか。
朝起きて見るなら、親友兼騎士なんかより、愛おしい妹様ですよねー。
「…スザク」
「はい?」
「今、ナナリーから紅茶の葉を貰ってくる。」
そしてルルーシュは微笑み、少し恥ずかしながら僕に訊いた。
「…そ、その、ずっとお前に飲んで欲しいと思ってた茶葉なんだ。せっかくいい朝なんだし…一緒に飲もう?」
その言葉だけで、僕の先程までの少し暗い気持ちが吹き飛んだ。
そして、僕も微笑んで言う。
「…イエス、ユア ハイネス!」
「…ば、馬鹿っ…」
そう言って、ルルーシュは少し照れながらナナリーの部屋へ向かって行った。
「可愛い…」
やっぱりルルーシュは僕だけの皇子。
守りたいなんて言ったら、本人は怒るけど……、本当にそう思う。
「大好きだよ…」
彼の前では決して口に出せない想いを、そっと囁いた。
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