湘北
□“温度”
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「おい。雷、怖いのか?」
先ほどまで寝息を立てていたお隣の席の方が話しかけてきた。
『み、三井くんは怖くないの?』
涙目になりながらお隣の席の三井寿くんに聞いた。
三井くんはニヤッとイタズラっぽく笑うと、“ヨユー。”と言った。
その時、今日でいちばん大きな音を立てて雷が落ちた。
「わっ!!」
「停電っ!?」
学校中の電気が落ち、教室は真っ暗になってしまった。
『ひっ!?』
私は雷も苦手だけど、暗闇は更に苦手。
何も見えない恐怖から、涙が流れてしまった。
ガタっ
机がわずかに揺れ、真横に人の気配。
「これで怖くないだろ?」
優しい声とともに感じた、右手の温もり。
横を見ると、私の大好きな人の赤く、優しい笑顔。
右手から伝わった温もりは
私の“好き”と同じ
温度。
fin. 2009/04/23