通常
□天赦日
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―――苦シイ、苦シイ。
―――誰カ助ケテ。
―――何故我ラガコノ様ナ目ニ。
―――憎イ、憎イ。
――――我ラヲ堕トシタ閻魔大王ガ憎イ……!!
ああ、煩わしい。
地獄へ堕とした亡者の呻き声。
もう慣れたけれど、やっぱり良い気分はしない。
(だってそれは、オレの罪の証)
「はい、次の人どうぞー。え〜っと、……うん。君は天国だね。お疲れ様。向こうにある扉から入っても良いよ。はい、次」
いつもと変わりない日常。
オレが魂を裁いて、獄卒がそれぞれの場所へと魂を案内して。
もう気が遠くなるほど前から繰り返されてきた、不変の日々。
―――――だからこそ。
「次の人。………君、生前盗みに殺人、前科はたくさんあるみたいだね。……当然、地獄行きだよ」
「……っ何で俺が地獄に堕ちなきゃなんねーんだ!冗談じゃねえ!」
―――――愚かな魂から、自分の行いを棚に上げて
「無駄だよ、無駄。君さぁ、生前そんだけやらかしといて天国に昇れるとでも思ったの?」
「……っくしょ…っ!
呪ってやる!地獄の底から、呪い続けてやるからな、閻魔大王…!」
―――――お門違いな恨みを持たれるのには慣れている。
「はいはい。さっさとそれ連れて行って、鬼男くん。
地獄に一名様ご案内〜」
―――――オレは、閻魔大王だから。
一日の業務が終了し、オレは自室で一人ぼんやりと寝台に腰掛けていた。
今日は何かの厄日なのだろうか。亡者の怨嗟の声がひっきりなしに聞こえてくる。
―――マタ、地獄ヘ堕トシタノカ。
―――何故我ラヲ地獄ニ堕トシタモウタ。
―――苦シイ苦シイ苦シイ。