通常
□vanish
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僕の朝は早くから始まる。
まだ外が薄暗い時刻に床を出て、前日に片付けられなかった洗濯物や食器を洗う。
それが終われば朝の鍛錬。
遣隋使である以上、体力は必要不可欠だし、僕自身体を動かすのは嫌いじゃない。
朝のメニューを終える頃には、辺りも明るくなってきていて、僕の出勤時刻となる。
ざっと水を浴びて汗を流し、軽い朝餉を食べてから朝廷に赴いた。
そういえば、大体この位の時間になると太子が来るのに、今日は来なかったな。
いつもやってきては、やれピクニックだのやれ四つ葉のクローバーだのと騒ぎ立てるのだが、今日はそれが無かった。
不思議には思ったが、考えてみると朝からあの太子の相手なんてしてたら朝廷に行く前に疲れてしまう。
こんな日もあるのだろうと、さして深く考える事はしなかった。
今日の仕事は驚く程スムーズに進んだ。
何かと理由をつけて、いつも僕の仕事の邪魔をしに来る太子が一度も訪れなかったのが最大の要因だろう。
結局その日は久々の残業無しで仕事が終了し、早く帰ることが出来た。
今日一日、太子に会うことはおろか見かけることすらなかったことに違和感を感じたが、ここでも深く考えることはしなかった。