通常

□時代を越えて伝わる想い
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 閻魔庁を出て、建物の入口。

「めんそーれ」と書かれた看板を掲げた建物を背に、私はここへ来る予定の人物を待つ。

 閻魔はどこで待つのかを指定しなかったけど、ここまで渡ってこれる人物だったらここで十分だ。

 この建物は、不思議と目立つから。





 


 待っている間暇だったので、私は柱に凭れ掛かりこのあとのことについて瞑想にふけることにした。
 

 閻魔はサーラメーヤと一日中遊んでいいと言っていた。

 そしたら2匹と一緒に散歩に出掛けよう。最近忙しくてサーラメーヤ達と遊ぶ機会がめっきり減ってしまっていたからな。

 どこへ行こうか。冥界の中を歩き回るのも楽しそうだが、いっそ下界に出てみようか。綺麗なお花畑を探して、そこで一緒に遊ぶのもいい。

 そうだ、そうしよう。一日仕事のことを全部忘れて、2匹に花冠を作ってあげよう。疲れたら風通しの良い木陰で一緒に眠って―――――



 このあとの楽しい予定に思いを馳せていると、目の前で人の気配がした。

 不思議に思い目を開けると、茶色い髪を靡かせて佇む年若い青年の姿。

 
 穏やかな瞳に宿る知的な光が印象的で。


 それは遠い日に別れた人物に酷似していた。
 









「失礼。

 貴方が“聖徳太子様”ですね?」









 その青年は私を視界に入れると優しげな声色で話しかけてきた。

  
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