sweetly

□弱気なサディスト
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いつも見かける黒い服に、サラサラな栗色の頭。
柔らかな風が吹くと同時になびく髪がとても綺麗。

その人は身長はそこまで高くなく、いつもなぜかバズーカや赤いアイマスクを持ち歩いている。

あまり近くで見たことはないのだけれど顔立ちがよく、かっこよくてかわいい顔をしていると思う。

最初にあの人を見たのは…えっと、いつだか忘れてしまったけど。

江戸を歩く度にあの人の姿を見かけるようになって、私はすっかり顔や特徴を覚えてしまっていた。

勿論、話したことなんてない。

名前も知らない男の子。

いつからか私はその人を見つけると、無意識のうちに目で追ってしまっていた。
そして私は今日も偶然、栗色のその人を見つけた。

見つけたというよりは会ってしまった、いや…ぶつかってしまったという方が正しいのかもしれない。
それは突然のことで、曲がり角を曲がって、ばったりと。



私はドンッと人にぶつかってしまい、地面にお尻をついてしまった。



『大丈夫ですかィ?』



「イタタタ…。すみません、…あーっ!!」



『…?』



伸ばされた手は掴まずに顔を上げると、目の前にはいつものあの人の顔があった。



『どうしやした?どっか痛むんですかィ?』



「あ…いや、えっと、平気です」



私はいきなり初対面の人に向かって、奇声をあげてしまった。
こっちが一方的に知ってるだけだから、この人は私のことなんて知らないのは当然。



『…?そうかィ。んじゃっ、気をつけてな』



その人はそう言って歩きだした。
名前くらい、聞けばよかったかもしれない。
でもいきなり初対面の人に名前なんて聞いたら不自然だし…。



私は歩くあの人の後ろ姿を、見えなくなるまで見つめていた。



風になびくサラサラな髪はやっぱり綺麗で、近くで見ると目も大きくて本当にかっこいい顔をしていた。



また会えるよね?



今日は初めてあの人の声が聞けて私はなんだか嬉しくて、この気持ちが恋なんだと初めて知った。










気付いてサディスト










次に会ったら名前くらい、聞いてもいいよね?

あの人にいつか、私の気持ちを知ってもらう為に。













(なんだ?総悟、やたらご機嫌じゃねーか)

(たった今不機嫌になりやした、死ね土方コノヤロー)

(よォォォし剣を抜けェェェェェ!)

END 20090122

 

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