Novel
□幼なじみ
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『お母さん、私ね、大きくなったら智兄ちゃんのお嫁さんになるの』
…まただ。
最近よく見る夢。
いつも決まって同じパターンで目が覚めてしまう。
この夢、別に知らないわけではない。
まだ私が4歳の頃、隣の智兄ちゃんが大好きでいつもお母さんに言ってた言葉。
大野智…隣に住む私と8つも離れた、いわゆる幼なじみ。
小さい頃からずっと遊んでくれてたお兄ちゃん。
でも、私はお兄ちゃんなんて思ったこと一度もないよ。
けど智兄ちゃんは…。
私はいつもと変わらず布団に横になりながらボ〜ッと考えていた。
枕もとに置いてある時計に目をやると午前6時10分。
『やばい。遅刻だよ』
今日は早番なのに あと50分までにホームに行かなきゃ(汗
申し遅れました。私は美春。
20歳で現在、実家を離れ一人暮らしをしている。
離れっていっても実家から歩いて20分ぐらいの近い距離だけどね(笑
介護福祉士の免許をとるためにグループホームで日々仕事におわれているのだ。
『ハァハァ…おはようございます』
ぎりぎりセ〜フ。
無我夢中に自転車をこぎながら来たために息があがっていた。
私が靴を履き替えようとした時だった。
(ありのままで もう一回歩き出そう 悲しみ越えて〜♪)
携帯が鳴る。メールだ。
この着うたは今、最も人気5人グループ嵐の曲。
なんとその中のメンバーの1人が智兄ちゃん。
しかもこれまたグループのリーダーとは…すごい。
私も何度か楽屋をお邪魔させてもらったことはある。
だから最近嵐のマネージャーが女性の人に変わったということも当然知っていたのだ。
メンバーの中ではマネージャーと智兄ちゃんの恋愛噂にあるらしい。
この間 二宮くんが楽屋で話してたのをたまたま耳にしたことがあった。
その日、仕事を終わらせ帰ろうとした時、またメールが届く。
お母さんからだ。
(今日、家で鍋するからおいで)
私は一言、わかったと返信し家に寄らずそのまま自転車で実家へと向かった。
外は5時すぎだというのに すでに暗く冷える。
寒さのあまりスピードを速めながら向かった。
今日は智兄ちゃんもぅ家に帰ってるだろうか。
智兄ちゃんは今も家族と住んでいる。
最近、コンサートのリハーサルなどで忙しく趣味である釣りにさえも行けないみたいだ。
私が家に着く頃もまだ智兄ちゃんの部屋は真っ暗だった。
『ただいま〜』
『おかえり。美春。寒かったでしょ?もぅ鍋できてるから手洗ってきなさい』
私の息が白くなっているのを見てお母さんが言った。
鍋はおいしかった。
家族みんなで話しをしながらする食事は最高にうまい。