小説『好きになってください』
□第1話『邂逅する動揺A』
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【1-F】
ユズキが教室をでて、
マコトは再び、ひとりになった。
マコト
「…っ」
マコトは、あぐらで俯いたまま
あふれる涙を必死で拭っていた。
ユズキが俺の頭をさわった瞬間、
自分でも驚いた。
決壊してあふれてくるかのような涙を感じて、あわててユズキを追い出してしまった。
見られたくない。
まるで、ユズキがふれただけで
安心しきった気がした。
それほどショックでもないと思っていた失恋に、
おかしいほど悔しさや、
哀しさが正直に迫ってきてどうしようもなかった。
不思議だった。
それでも、人前で泣けなくて…
あんな態度、ユズキはわけがわからなかったはずだ。
出会ったばかりなのに
話をしてくれたことも、
手伝ってくれたことも、
友達になれたことも、
えらいと言ってくれたのも
うれしかったのに。
それが、ユズキでよかったと
思っていたのに。
マコト
「…ユズキ」
明日、あやまろう。