「おお振り」×「ダイヤのA」

□第10話
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「みゆき、かずや〜!」
グラウンドに聞き覚えのある声が響く。
御幸は「マジか」と頭を抱えた。
そして隣に座る阿部と、深い深いため息をついたのだった。

ついに迎えたメジャーリーグ開幕戦。
御幸はウォーミングアップを済ませ、試合開始を待っていた。
今年も無事、レギュラーポジションを獲得している。
優勝とキャリアハイを目指し、今年も頑張るだけだ。

昨年と違うのは、阿部が隣にいることだ。
表向きは阿部の通訳ということにした。
御幸はもうすでに英語は堪能で、通訳は必要ない。
なんなら日常会話は阿部より上手い。
だから専属トレーナーの阿部に、通訳の役も与えた。
こうすることで、ベンチ入りができるのだ。

そんな新たなシーズンの始まりに、御幸は頭を抱えていた。
なぜならスタンドから、知っている声が聞こえたからだ。
いや、彼らが来るのはわかっていた。
どこにいるのかさえ、わかっていた。
だってこの開幕戦のチケットは御幸自身が手配したのだから。
しばらくアメリカを旅行するというので、せっかくならとプレゼントした。

そしてその一角は、ベンチから見ても目立っていた。
恋人であり、後輩である男は、無駄に声がデカい。
そのデカい声で、御幸の名を連呼していた。
しかもなんだか派手にジャラジャラしている。
旅の相方である男も、一緒になってはしゃいでいた。

「何であんなに目立つんだ。」
「まぁ沢村ですから」
「三橋だって目立ってるぞ。」
「ですね。ところでこの試合、日本もテレビ放送されるんでしたよね?」
「うわ、絶対抜かれるじゃん。あれ!」

御幸と阿部は顔を見合わせると、再びスタンドを見る。
大声を張り上げる沢村と、一緒になってはしゃぐ三橋。
あれがテレビで流れたら、今までの動画の比じゃない注目度だ。

御幸は「マジか」と頭を抱えた。
そして隣に座る阿部と、深い深いため息をついたのだった。
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