「おお振り」×「ダイヤのA」

□第7話
1ページ/3ページ

「すごい街だね!」
三橋が目をキラキラさせながら、感激している。
沢村も頷きながら「楽しいな!」と破顔した。

三橋と沢村はついに渡米した。
最初の到着地はニューヨーク。
宿泊するのは、マンハッタンのそこそこグレードの高いホテルだ。
予定では2週間ほど滞在するつもりだった。

世界的に有名な場所はたくさんある。
2人はテンション高く、オーソドックスな観光を楽しんでいた。
エンパイアステートビル、自由の女神、マジソンスクエアガーデン。
ブロードウェイでミュージカルを見た。
ヤンキースタジアムで野球も見た。
美術館をはしごして、アートを楽しんだりもした。
ウォール街でビジネスマンが闊歩するのを見て、カッコいいなと思った。

本当に楽しい旅だ。
お金はそこそこあり、時間はたっぷりある。
ただただ聞いたことがある観光名所を巡るだけで、すぐに2週間経ってしまった。

そして今、2人はセントラルパークにいた。
緑豊かな園内のベンチに腰を下ろし、のんびりとした時間を楽しむ。
そこここで弾き語りや大道芸のパフォーマンスが行われていた。

「すごい街だね!」
「楽しいな!」

三橋と沢村はシンプルな言葉でこの街を評した。
そう、2週間みっちりと観光したいのに、まだ行きたい場所がたくさんある。
もう少し滞在しようか?
だけどそんなペースでやってたら、この旅が何年かかるかわからない。

「それにしても、物価が高いな。」
沢村の言葉に、三橋がコクコクと頷く。
楽しい旅行の唯一の問題はこのところの円安だった。
如実に感じるのは、食費の高さだ。
安くても2人で数千円。
ちょっと贅沢でもしたものなら、簡単に1万円を超える。

2人で顔を見合わせてため息をついたところで、三橋が「あ」と声を上げた。
そして「栄純君」と声をかけ、目の前の光景を指差す。
大道芸人のパフォーマンスに、多くの人が集まって、盛り上がっていた。
そしてそれを見た沢村は、三橋の意図を察した。

「こづかい稼ぎ!」
「だな。やるか!」

二っと笑い、ハイタッチをした三橋と沢村。
楽しい旅行に新たな1ページが加わる瞬間だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ