短編

□拍手小話
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『梯子』


一が梯子に登ってみたいと言い出したので、和義は納谷から梯子を運んできて、庭の立派な楠の木にかけてやった。一は喜んでそれに足をかけた。

「しっかり支えててね、おじいちゃん」
和義は笑って頷いた。一はせっせと登り始めた。

良枝が見ていたら怒鳴られるだろうと留守中の妻を思ってひっそり笑った。彼は幸せだった。
気づけば一はあっという間にてっぺんまで登っていた。気を付けろよと和義は声をかけた。一は笑って手をふった。
その時、一が足を踏み外した。和義は咄嗟に梯子から手を離して両腕を前につきだした。小さな身体が降ってきた。
一は一瞬きょとんとしてからわっと泣き出した。和義はほっと安堵の溜め息を漏らした。

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5月10日までの拍手小話。
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