短編

□季節はずれの
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「なんだぁ、寝坊かあ。それなら仕方ないよね。所謂寝ぼけってやつ? まぁそれにしてもちょっと寝坊しすぎだとは思うけど……」
 ぼくは最後まで言えなかった。いきなり女の子がすくっと立ち上がったかと思うと、ぼくの左頬を、遠慮なく思い切りグーで殴ってきたのだ。
「な、何するんだよっ」
「うるさいわ! 」
 サンタクロースの女の子はすごい剣幕でぼくを怒鳴りつけたかと思うと、そりに駆け戻ってひらりと飛び乗った。女の子の動作に合わせて首のベルがチリリンと鳴っていた。ぼくはといえば、情けないことに、女の子に気圧されて何も言えずにただ突っ立っていただけだった。やられっぱなしだ。
「行くわよトナカイ! 」
「へーへー」
 女の子が合図すると、トナカイが面倒くさそうに足を前に踏み出した。二、三歩前に進んだかと思うと、ぼくの目の前でトナカイの足がふわりと宙に浮き、彼が引くそりも後に続いた。
「今日あったことは見なかったことにした方があんたのためよ! 」
そう捨て台詞を吐いて、空飛ぶそりに乗った女の子は、青空のなかを去っていった。ぼくの手元に、小さなプレゼントの箱を残して。
相変わらず青空には雲ひとつなかった。
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