短編

□真っ赤な
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大家さんが持ってきてくれたのは、赤い、小さな粒々。
真っ赤に熟れたそれらは、タッパーのなかでつやつや光っていて。私の目は自然に惹かれた。
「実家からたくさん送られてきたので」と大家さんは照れ臭そうに。
人当たりのよさそうな柔和な顔に視線を戻すと、可愛らしいいちごみたいに赤らんだ頬。それを見て、つられてあたしまで頬に熱が集まった。
反射的に、想いを告げられた昨日の夜のことが脳裏に浮かぶ。
ありがとうございます。
そう言ったあたしの声が、微かな緊張を含んでいた。

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