Novel*

□mishap
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「ティエリアー、映画何見たい?」
「何でもいいです」
「ったく、折角のデートなんだからもっと楽しそうにしろよなー」
「………」

俺の言葉に如何にも不機嫌ですって顔のお嬢さん。
けど今日はその中に少しの照れが混じっているのを俺は見逃さなかった。
何せ久しぶりの休暇だ。
こうして二人きりでいられる数少ないチャンスにお互い楽しくないというのはちょっと、いやかなり頂けない。

「ティエリアは俺と二人きりじゃ不満?」
「!?べ、別にそういうわけでは…」
「俺はすごい嬉しいよ」
「……私、も、です…」

自分の気持ちを素直に口にすれば、照れて更に俯いてしまったが同じ様に打ち明けてくれた。
そんなティエリアが愛しくて、手を取りギュッと握る。
さて、本題の映画だが。
俺の中では二者択一。
純愛もので二人の愛を深め合うか、はたまたホラー系で「キャー、怖い!」なんて抱きつかれるのもアリだ。

「………いや待てそれはないな。よし、こっちにしよう」

ティエリアの性格からしてホラーを怖がるはずがない。
消去法で残った方を選択した俺はチケットを買いに走った。



「お待たせ…って、いつの間にかポップコーン買ってるし」
「映画にはコレだと言われて貰いました」

手にしているポップコーンに苦笑が漏れたがふと違和感を感じた。
ティエリアは今貰ったと言わなかったか?
誰に、と聞こうとしたが澄まし顔で交わされてしまい、スタスタと俺を置いて館内へ入って行った。
慌ててその後を追う俺の脳裏に一瞬二人の顔が浮かんだ。

「まさか…いや、そんなわけないよなー…」

あの二人がこんな所にいるはずがない。
そう結論付け、頭を横に二、三度振って打ち消した。



「ティエリアさん…出来れば一番後ろに行きたいんですが…」
「私は此処がいいです」

先に館内へ入ったティエリアは前後左右真ん中の真ん中に陣取っていた。
俺の予定では一番後ろの席で誰にもバレないよういちゃいちゃするはずだったんだが…。
まぁいい。
どこだろうがお前を襲うのには変わりないんだからな。
その内善がり狂わせてやる!
一人野望を胸にティエリアの横に腰を落ち着かせた。

「あー、そういや飲み物買ってなかったなー。お前さんは何がいい?」
「アイスティーがいいです」
「オーライ。じゃ、いい子で待ってろよ?」
「子供扱いしないで下さい!」
「もう知らない人から物貰っちゃダメだからなー」
「分かってます!いいから早く行って下さい!」
「はいはい」

サラサラの髪を撫でると真っ赤になり、それを隠そうと俺の手を跳ね除けるティエリアに頬を緩ませ惜しみながらも席を立った。



「遅い…」
「ゴメンゴメン、ちょっと混んでてな」
「もう始まりますよ」

ドリンクを渡し席に着いたその時、照明が落とされ辺りは一気に暗くなった。
途端に気持ちが高揚し、子供のようにワクワクした。
映画を楽しむのではなく、ティエリアを楽しむ事で俺の頭の中は一杯だ。
チラと隣を見遣ればポップコーンを頬張りジッとスクリーンを見つめる横顔。
早くも手を出したくて堪らない。
せめて食べ終わるまでは待ってやろう。
楽しみは先延ばしにすればするほどいいと言うし。
ここは我慢だ。
なるべく隣を意識せずに意識をスクリーンへと集中させた。



そろそろいいかな、とそっと手を握ろうとしたその時、背凭れに後ろの席のヤツの足が当たり、一瞬手が止まった。
これから良い所なのに…。
ゴンッ。
再び背凭れに衝撃が走る。
俺がティエリアに何かしようとする度に後ろの背凭れが蹴られ、限界を迎えた俺は文句の一つでも言おうと大きく後ろを振り返った。

「げっ……」
「ニール、しーっ!」
「わり…って何でお前らがいんだよ!?」

ティエリアはよっぽど集中したいのか、人差し指を唇に当て注意してきた。
後ろの二人には気付いているのかいないのか…。
俺の後ろに座っていたのはニヤニヤと性質の悪い笑みを貼り付けているアレルヤ…いや、ハレルヤだった。
その隣にはハレルヤの肩に寄り掛かって眠る刹那の姿も。

「ラッセにタダ券貰ったから見に来てやったんだよ」

身を乗り出しヒラヒラと二枚のチケットを振って見せ、したり顔で答えるハレルヤ。
何でこんなベストタイミングでベストポジションにいやがるんだよお前ら!!
明らかに不自然な行動の二人に今は上映中だという事を思い出し、渋々前を向いてきちんと椅子に座った。

「ティエリアに何かしてみやがれ、後ろから狙い撃ってやる」
「それ俺のセリフなんですけど…」
「抜け駆けした罰だ」

いつの間に起きたのか、刹那の声までした。
折角のプランも台無しだ。
俺は肩を落とし、大きく息を吐いた。





********

ニルティエのはずがお邪魔虫が二匹出てしまいました;
いちゃいちゃするはずだったのになぁ。
何処で間違ったんだろう。

恐れ多くもノヴァ様に捧げさせていただきます。
返品苦情いつでもお待ちしております(´△`)







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