断罪編

□Story.40≪Chapter 8-3≫
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“罪人達”が集う要塞のテラス、そこには外の景色をただ見つめているクラウゼの姿があり、隣にはプリンが彼を心配そうに見ている。


プリン
「クラ…。」


ぼそりと呼び掛けるも、届いていないのかこちらを向いてくれなかった。
彼女は元々声量は大きくないのだが、静けさが漂うこの場所でなら応答してくれる。
それにも関わらず、ずっと視線を変えていないのは、何か考え事をしているのだろうか。


???
「クラウゼさん達もいたんですね…。」


そう思っていた矢先に少女の声がし、プリンは振り向くとエルゼとレッドがやって来た。


プリン
「エルゼ…、レッド…。」

レッド
「君達に伝えたい事があるんだけど…いいかな?」


レッドは二人に目を配りながらそう言うと彼女は了承し、クラウゼもそのままの状態で「何だ?」と言った。


レッド
「ここに来る途中で、クララに『明日、ラクシアにいるスマブラメンバーの皆様に会わせてあげます』って言われたんだ。本当かどうかは分かんないけど…。」


“罪人達”はほとんどの者達が以前から怪しんでいる為、この伝言でも疑わしく思ってしまう。
レッドも後から苦笑い気味であり、プリンもそうさせてくれるのかどうか不安である。
カービィ達と会わせるという事は、ノア達も同行して来るであろうとエルゼが付け足すと、クラウゼも「そうか…」と薄めの反応を示していた。


エルゼ
「気が進まないんですか?」

クラウゼ
「いや、俺達の本心を伝えるには良い機会だ。…ただ、少し気になる事があってな。」


クララの伝言には不満があるのかと思われたが、どうやら彼は別の事を考えていた様だ。
それは一体何なのか、プリンは説明を求め、エルゼとレッドも耳を傾ける。


クラウゼ
「昨日、ゲイリーという将軍が指示した翼を持つ者達を覚えているか?」

レッド
「うん。確か、死から甦ったリヴァデッド…だったよね。」


昨日の≪新緑平原≫にて、ラインやリュカが説明してくれたリヴァデッドに関する事だった。
禁止魔術で復活させた者の命令には逆らえず、死ぬと魔物の様に塵となって身体が消えていく。
外見や思考などが生きていた頃と全く同じでも、まるで操り人形みたいに任務を遂行する。
リヴァデッドの特徴を改めて思い返すと、ラクシアにいた11人のスマブラメンバーとそのパートナー達だけでなく自分達にまで襲撃させたのは、将軍ではなく術者だとクラウゼはそう思っている。


クラウゼ
「幹部がわざわざそれを言って来たという事は、俺達にとってのラストチャンスと言ってもいいだろう。」


彼の一言により他の3人は言葉が出ず、テラスに沈黙が訪れた。
ラストチャンス、それは信頼と忠誠を示すモノなのか、あるいは生死に関わる事なのか。
どちらにせよ、目的や望みが果たしたいのなら最良の選択をしなければならず、パートナーの気持ちの考慮も必要だ。
進む道次第では、完全にレッドやプリン達のかつての“仲間”を敵に回すのかもしれないのだから。
そう思うとエルゼは不安そうにレッドを見つめ、ゆっくりと俯いた。


エルゼ
「…レッド君…。」

レッド
「ルフィーナ、君が思っていた道を選べばいい。僕も共に歩んでいくから。」

エルゼ
「…ありがとうございます。またあの人達と会うまで、ちゃんと考えて決断しますね。」


優しい彼の表情に、顔を上げた彼女は思わず笑みがこぼれた。
今まで景色ばかり見つめていたクラウゼは振り向き、隣にいるプリンを抱えてこう言った。


クラウゼ
「どんな事だろうと、俺の正義を貫く為に選択する。…それがプリンにとって悪い方向に繋がるかもしれないが、構わないか?」

プリン
「大丈夫です。クラウゼなら、一番良い方を選ぶ筈ですから。」


他のスマブラメンバーを裏切る形になってしまうと懸念していたが、彼女の強い信念に安堵の息を漏らした。


最後の対面だと知らされた時、ヒトは必ずその日まで後悔のない道を探し出す…。
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