断罪編

□Story.36≪Chapter 7-4≫
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時刻は13時1分、王都≪レヴォリス≫から少し離れた西部の街―≪アシスカルト≫。
その東側の広場にて、子供達が描いた絵や披露する特技を見て微笑む少女がいた。
白い瞳孔と藍色の瞳で左目に眼帯を付け、ターバンに似た帽子を被り小さな星の飾りを付けた黄色寄りの金髪のセミロングで、胡散臭いが神秘的なオーラを放っている。


子供A
「天杓ねーちゃん!ウチなぁ、大きくなったら魔導養成学校で魔法の事いーっぱい勉強して、助けてくれた人達に恩返ししたいねん!」

子供B
「俺はかっこええ騎士になる!お兄ちゃんみたいに強くなって、皆を守るでー。」


そこに二人の子供が将来の夢を語ると、少女―月城天杓は更に表情が明るくなり、カバンに手を入れると二つのキャンディを取り出した。


天杓
「その心意気ならなれると思うヨ。応援の意味を込めて飴ちゃんプレゼント。」

子供B
「やったーっ!」

子供A
「おおきに〜。」


それぞれ手渡すと、子供達は満面な笑みでお礼を言い、走りながら広場を去った。
彼女も笑顔で見送ると、白いマントを羽織った菫色の長髪の女性―インフィリアが近付いてきた。


インフィリア
「子供達の笑顔も、だんだん戻って来たみたいだな。」

天杓
「そうだネ。初めてここに来た時は、ずっと泣いてた子もいたカラ。」


自然が溢れているが、規模としては王都に比べるとやや小さめなこの街にいる住民の大半は、3日前に起きた大火災で避難した者達ばかりである。
先程天杓の元に集まった子供達は皆、その時に両親や兄弟を亡くし孤独になってしまったのだ。
逃げる最中に押し寄せる恐怖と、ずっと側にいてくれた家族を失った事でショックや悲しみに溢れ、彼女を含むボランティアの人々の呼び掛けになかなか答えてくれなかった子もいた。
だが同じ立場にいる者同士が話し掛ける事によって次第に元気を取り戻し、今となっては大人達の手伝いをしたり将来に向けて勉強を始めたりしている。


天杓
「そういえば見掛けない顔だネ。もしかして、アンタもあの大火災の被害者カナ?」

インフィリア
「王都にはいたけど被害者じゃない。…あの時に命を落とした私の使者の墓参りをして、帰りにちょっとこの街に立ち寄っただけだ。」


インフィリアの一言に、天杓はまさか原因を突き止めに行ったのではないかと予測する。
その途中で“使者”を失ったが、彼女の表情は犠牲と引き換えに何かを得たと感じ取る。


天杓
「これはアタシの予想なんだけど、ソロソロ一連の事件を解決する時が来るんじゃないかなって思うのヨ。」

インフィリア
「どういう事だ?」

天杓
「アンタといい、テレビで話題になってる貴族のオジョーチャンといい…。国王が死んでも、こうして積極的に意欲を見せてるヒトがいるからネ。」


確かに大火災の報道を機に、この3日間で様々な手掛かりが入ってきており、色んな意味でまさに急展開だと言ってもいいだろう。
肝心な犯人の情報はまだメディアに流れていないが、これだけでも事件の早期解決を望む者にとっては希望が持てる。
ところで何故、初対面である筈の天杓は自分が解決の意欲があると見抜いたのか気になるのだが、そろそろ戻る時間が近付いて来るのでインフィリアは聞かない事にした。
広場から去ろうと振り向くが、ここで何かを思い出したかの様に再び天杓に視線を向けた。


インフィリア
「あー、そうだ!まだ名乗ってなかったな。私はインフィリア・ゼノンだ。君の名は?」

天杓
「アタシは月城天杓。元はしがない行商で、今は避難したヒト達を元気付ける為にボランティアをやってるヨ。」


それは互いに名前を言っていなかった事で、二人は微笑みを見せつつ自己紹介をした。


インフィリア
「元気付ける為に…か。じゃあ私はもう行くけど、ここの事は頼んだぞ天杓。」


何も解決への進展を伝える事だけでは、避難者の笑顔は戻らない。
互いに支え合い、不安を取り除く事で生きる希望を見出させるのも大事だ。
この街にはそれに相応しいボランティアがいると知り、安心した表情でインフィリアは広場を去った。


天杓
「きっと、あの子達がやってくれる…。どんなに長引いても、必ずピリオドは打たれるモンダカラ。」


彼女を見送った時に呟いた天杓の言葉には、解決に挑む者達に期待を寄せていた。
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