V

□春を見せてくれるヒト/桜を見つけた彼女
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春を見せてくれるヒト



もう、こんな風に毎日先生と会うことができなくなる。

新学期がはじまる。


「どうした?」


先生自作のプリントから顔をあげて、先生を見つめていたことを知られてしまった。

なんとなく気恥ずかしい。


「あの、もうすぐ学校がはじまるなあと」

「あー、そうだな。春休みって意外と短いんだよなあ」


そう、短いのだ。

でも、先生と会わない日はなかったな。

図書館で勉強したり、本を読んだり。

社会見学として水族館に行ったりもした。

とても楽しかった。

数学も少しは好きになったと思うし。

先生のおかげだ。


「それ、終わったら外行くぞ」

「どこに行くのだ?」

「んー、春っぽいとこ。まだちゃんと見に行ってねえし。朽木と行ってみたいから」


どこだろう。

春っぽいということは春らしい景色が見られるところだ。

外で、春。

ああ、今日はいい天気だから散策するのも楽しそうだ。

先生は花とか樹の名前をかなり知っているし。

以前、ここで大きな図鑑を広げていたこともあった。

眺めるだけでも面白いぞって言われたけれど、私にはよくわからなかった。

何か珍しい花が咲いているのだろうか?

先生は何を見せてくれるのだろう、楽しみだ。



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