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□春を見せてくれるヒト/桜を見つけた彼女
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春を見せてくれるヒト
もう、こんな風に毎日先生と会うことができなくなる。
新学期がはじまる。
「どうした?」
先生自作のプリントから顔をあげて、先生を見つめていたことを知られてしまった。
なんとなく気恥ずかしい。
「あの、もうすぐ学校がはじまるなあと」
「あー、そうだな。春休みって意外と短いんだよなあ」
そう、短いのだ。
でも、先生と会わない日はなかったな。
図書館で勉強したり、本を読んだり。
社会見学として水族館に行ったりもした。
とても楽しかった。
数学も少しは好きになったと思うし。
先生のおかげだ。
「それ、終わったら外行くぞ」
「どこに行くのだ?」
「んー、春っぽいとこ。まだちゃんと見に行ってねえし。朽木と行ってみたいから」
どこだろう。
春っぽいということは春らしい景色が見られるところだ。
外で、春。
ああ、今日はいい天気だから散策するのも楽しそうだ。
先生は花とか樹の名前をかなり知っているし。
以前、ここで大きな図鑑を広げていたこともあった。
眺めるだけでも面白いぞって言われたけれど、私にはよくわからなかった。
何か珍しい花が咲いているのだろうか?
先生は何を見せてくれるのだろう、楽しみだ。
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