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□唯一無二
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その場を一瞬にして凍らせたのは他でもない副隊長の黒崎ルキアであった。

彼女の氷雪系の斬魄刀の力が発揮されているかのように体感温度は底冷えする真冬のようなそれだった。


「副隊長…」

「なんだ」


硬く、どこまでも低い声が返ってきたため声をかけた隊士はだらだらと冷や汗が流れ、今にも卒倒しそうだった。

一同がぴしりと凍っているのを一瞥したあとルキアは、目の前のオレンジ色の髪を持つ自隊の隊長に鋭い視線を向けた。


「何か言うことはあるか」

「…何も」


さきほど、ルキアに思いきりグーで殴られた頬を撫でさすってはいるが一護は立っていることが不思議なくらいの重傷を負っていた。

隊長羽織は血で赤く染まり、斬月を握る右手には裂傷、左腕にはえぐられたような傷口。

数え上げるとおびただしい数になるに違いない傷数に皆、早く治療をと思ってはいるもののルキアに圧倒されて動けずにいる。


「貴様は自分がどんな存在であるのかの自覚はあるのか?隊長の意味をわかっておるのか?救援を待つことがなぜできぬ。四番隊が到着するのを何故待てぬ。我らが来る前にすべてを終わらせておきたかったとでもいうのか!?」


先遣の報告よりも数の多い虚、加えて大虚の出現。

一護は念のためにと、救援を隊舎で待機していたルキアたちに要請した。

共に救護要請も。

皆が来るまでに終わらせてしまいたかったのは本当のこと。

これ以上誰にもケガをさせたくなかったから。


「自分ひとりで戦えばすむとでも思っていたのか!?」


まっすぐに、ただまっすぐに向けられる眼差しに一護はぎゅっと心臓を握られた気がした。

それはぎりぎりと追いつめる。

一護ではなく、ルキアを。

ルキア本人が自覚していない、心の痛み。


「貴様ひとりで戦っているわけではないのだぞ。隊長が先陣切って向かってしまったら皆はどうするのだ。初任務の者もいたことを忘れたのか!一から十まで指示しろとは言ってはおらぬ。だが、指示一つしないのは…」


指揮権を上位席官に渡せば何の問題もなかったのだと今更ながらに一護は理解した。

ふぐっと息をのみこむ音がする。

その音は目の前にいる小さなけれど大きな存在から。


「ルキア」

「なんでもない」


感情を殺した声に表情が一瞬にして作られた。

一護以外にはわからないであろう小さな変化。

揺らがずにあろうとする故に奥底に感情を押し込めた。


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