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□ふぇろもん?
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「ただいまーっと」
ドアを開けると「おかえり」とテレビを観ていたらしいルキアが寄ってきた。
つけっぱなしのテレビからは語尾に“ぴょん”がつく会話がされている。
ルキア気に入りのテレビ番組だ。
いつもなら食いつくように画面から目を離さないのに、いったいどうしたのだろう。
背中に回った腕にぎゅっとされる。
うれしくてしかたないのに気になってしまう。
「ルキア?」
ぐいっとネクタイを引かれて屈まされる。
屈まないと確実に首が絞まるから、ルキアの背にあわせるように身をかがめた。
すると、くんくんと匂いをかぐような仕種をしている。
かと思えば、すぐに離れてテレビに向かってしまった。
俺は訳がわからず立ちつくすが、ルキアの考えていることがまったくわからないのでしかたなく着替えて夕食づくりをはじめた。
煮詰めている時間は意外と暇だったりする。
目を離して別のことをはじめると焦がしてしまうので、何もできないからだ。
汗くさかったとか?
部屋に入ったらわかるぐらい匂っていた?
んー、そうだったら確実に風呂へ直行させられそうだよなあ。
思考はさっきのルキアの行動についてになるのだがまったくわからない。
煙草の匂いがしたとか?
俺は吸わないけど、吸ってるやつの隣にいたら匂いはつくしなあ。
呑み屋とか行ったらすごいんだよな。
いろんな匂いが染みついて、困る。
あと、匂いっていったらなんだ?
シャンプーとかボディソープとかか?
ごくごく普通のしか使ってないけどなあ。
あ、でもルキアのところに泊まった時は同じ匂いになるんだよな。
なんか甘いかんじのやつ。
でも、今はルキアがウチに泊まってるから違うよなあ。
ウチにはルキア用のシャンプーもリンスもボディソープも揃えてあるし。
この間一緒に買いもの行った時に買ったやつだ。
ぜんぶ“イチゴ”なんだよな。
すっごい甘い匂いがするんだ。
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