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□名刺のはなし
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「見ろ、これを!!」
ルキアが示したのは二枚の紙。
帰宅の挨拶よりも先に声がかけられた。
ねだってキスをしてもらってから、答える。
「名刺か?」
「そうなのだ。織姫につくってもらった」
あー、今日は井上のところに行ってくると言ってたな。
「なんで名刺?」
「織姫の名刺を見せてもらってな。ほら、これだ。きれいだろう。そうしたらな、つくってくれるというのでぱ、ぱそこんでつくってもらった」
井上の名刺はシンプルだけど彼女らしい独特な部分もあった。
彼女は手芸の腕を活かし、小物や服を作ってネット通販で売っているらしい。
名刺にもホームページ名とアドレスが記載されている。
順調に軌道にのったってとこか。
「私のはな、私をいめーじして織姫がつくってくれたのだ」
すごかろうと嬉々としているから、少しだけ妬いてしまう。
名刺にというか、井上に。
手渡されたルキアの名刺は雪の結晶が背景になっている。
あってるな。袖白雪もそうだけど、ルキアには雪の結晶が似合う。
右下にいるうさぎのシルエットも。
ルキアにぴったりの名刺だ。
「良かったな」
くしゃくしゃに頭を撫でても嫌がらずに上機嫌のまま。
「うむ。それでな、一護の名刺もつくったのだ」
もう一枚、手渡された名刺。
そこには、俺の名前があって…。
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