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□ちょこづくし
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朝からチョコ三昧。

デザートとして、おやつとして。



今日はバレンタインで、でも家には二人きり。

親父は町内会の温泉旅行、妹たちはスキー旅行。

だから俺とルキアの二人しかいない。


その二人きりを存分に味わいつくしたいのに、今日のルキアのガードはかたくおあずけ状態が続いている。


明日の夕方までというタイムリミット。

少しでも長くと思うのはわがままだろうか。



「一護ー、風呂に入れ」

「わかった」


いつもよりもはやい時間だがはいってしまおう。

風呂から出たらルキアを連れてベッドでいちゃついてやる!


浴槽は茶色だった。

ほのかに香るチョコレートの匂い。

ここまで徹底されるとすごいかもしれない。

朝飯の後は苺がチョコでコーティングされたのがデザートだった。


10時のお茶ではチョコレートケーキ。

もちろんルキアお手製の。


昼飯後には溶かして固めたといっていたチョコ。

凝ったデコレーションがされていた。

キラキラしてるのとか。



3時のおやつはホットチョコだった。

ちょっとビターな。そういえば、夕飯の時にデザートなかったな。

もしやこの風呂がデザート代わりなんだろうか?

まあ、面白い風呂だけど。



「失礼、するぞ」


声の方向に視線をやると、タオルに身を包んだルキアがいた。


「る…」


名を呼び終わる前にルキアが浴槽の中にはいってきた。

一緒に風呂に入るのなんて初めてなんかじゃないけど、でもなんだか無性に恥ずかしい。

ルキアもそうかんじているようで顔をうつむかせている。

向かいあうように座っているから手を伸ばしてルキアを引き寄せ、抱きしめた。


「今日、チョコ三昧だな」

「まだ、残ってる。風呂上がりに渡す」


たぶん、今から渡されるのが一番ルキアが渡したかったものだ。


「楽しみにしてる」

「…一護、その。…いや、あとでにする」


耳まで真っ赤にしているルキアが気になる。

何を言おうとしているのだろう。


「なに?今は言えねえのか」


ふるふると首を振って、ゆっくりと顔をあげたルキアと見つめあう。


「一護が、好き。だ、から…どうぞ召し上がれ」


さあと誘うように顔が近づく。

俺はもう我慢なんかできなくて腕の中のルキアに「いただきます」と告げて遠慮することなく食べた。

(終)
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