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□想う彼女/想い出の中のヒト
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想う彼女



「おい、聞いているのか黒崎っ」

「あ゛?」


声の主をみると石田だった。

高校時代からの腐れ縁なのか大学の講義もほぼ一緒。


「何度言わせれば気が済むんだ、君は」

「だから、何の用だよ」

「はああ、次の講義はグループ活動だろう。君と僕は同じグループだ」


そこまで言われて思い出す。

確か今日は発表だ。

一コマを半分にして前半を発表、後半が反省になっている。


「悪い、すっかり忘れてた」

「最近、上の空が多いようだけど心配事かい?」

「へ?」


石田に心配をかけているなんてまったくこれっぽっちも思っていなかったから思わず間の抜けた声が出た。


「呼んでもすぐには気づかないし、溜め息をついては講義中外を見てるようだけど」

「…よく見てんな」


暇なのかとつけたすと思いっきり否定された。


「僕じゃないよ。井上さんが気にしているようだから」

「あっそ。別に大したことじゃねーし」


教科書類を鞄にしまって立ち上がる。

隣棟への移動時間を考えるとゆっくりしている場合じゃない。

第一、次の講義はいろいろと細かいところまで見る教授だ。

遅刻なんかしたら減点される。

廊下を走るように駆けると、石田もついてくる。

まだ何か言いたそうな顔をしているが、今は講義の方が気になるらしい。

まあ、そりゃそうだ。

今日の発表と試験の出来によって単位が取れるかどうかが決まるんだ。

俺も切り替えないと。


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