V

□初恋味の距離
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「ルキア、これやる」

「む…ありがとう」


ちょこんとルキアの小さな手にのせたそれはラッピングされたもの。

チケットを買ったときに渡された。

細い指がリボンを外し、中身を取り出す。


「いちごの飴だ」

「あー、いちごフェアとか言ってたかも」


ルキアの手には飴が三つ。

と、小さな紙片。


「ほぉ、赤いのは甘くて、白いのは初恋の味」


読み上げた言葉にふうんと思っていると、赤い飴が手渡された。

ルキアは白いのを口に放りこむ。

むぐむぐと口の中を飴が移動している。

好みの味じゃなかったのだろうか、顔がしかめられた。


「ルキア?」

「むー、これは本当に初恋の味なのだろうか?」


考え込むように顎の下に手を置く。


「一護、この飴すっぱい」

「ん?」


ルキアが何を言いたいのかがわからない。

くいっと袖を引っぱられる。


「どうして甘くないのだろう…」

「えっ…と」

「だって、甘いはず」


顔が近い。

どうしても口元に目がいってしまう。

意識をずらそうと、思考を働かせてみる。

飴なのに甘くないことが嫌なのだろうか?

でもさっき、白い飴を食べた時はどこか期待した表情だった気がする。

期待とは何に?


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