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□誘ってくれたヒト/手を引く彼女
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誘ってくれたヒト
「今週末にウチの大学で学祭あるけど…」
どこか困ったような表情で彼が言った。
「行きたい!」
うれしくて思わず大きな声を出してしまい、慌てて口を手で塞いだ。
周囲を見回すと人影はなく、誰かの迷惑にはならなかったよう。
ほっとしつつも、先生ににじり寄る。
だって、ずっと気になっていたことの一つだから。
私が知っていることは少ない。
ウチの高校の卒業生で、剣道部員だったこと。
浮竹先生や乱菊先生と仲が良いこと。
ひとり暮らしをしているらしいこと。
先生の通っている大学はここから遠くない距離にある。
でも高校生の私にとっては大学というのは敷居が高すぎて、足を踏み入れるのが怖い。
だから、行ってみたい。
先生と一緒なら、何の心配もない。
「一日目よりは、二日目のが出し物とか多いけど、どっちがいいんだ?」
両日共に予定はない。
どちらの方がいいだろうか。
二日間共だったら迷惑かな?
「りょ、両方…は、ダメか?」
見上げた先生はきょとんとして、でもすぐに口元をほころばせた。
「欲張り」
「え…いいのか?先生、暇ではないのだろう。当番とか、出し物とか…」
「暇だよ。サークル入ってるわけでも、実行委員でもねえから。ただ、知り合いのとこに顔出さなきゃなんねーから、俺は二日間行く予定だった」
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