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□愛でる距離
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頭上には淡いピンク色。

その奥にある空が見えないぐらいに覆っている。

花見と称されていてもしていることはいつもと同じ、ただの飲み会。

場所が違うというだけで、花を愛でている人はほとんどいない。

飲んで、食べて、騒いでいる。


「ルキア?」


隣の一護が問うような眼差しで見つめてきた。


「あ、いや。なんでもない」

「そっ?」


サークルでの花見は毎年四月上旬に行われるために新入生の姿はない。

一護以外は。

毎年、そういう決まりなのだそうだ。

だから、私や桃も去年は参加していない。

去年の今頃はまだ履修届けやら何やらで忙しくしていてそれどころではなかったのだ。

まだこのサークルにも入るとは決めてはいなかったし。

一護がいるのは会長命令だからだ。

たまたま、構内にいた一護が乱菊さんに声をかけられて連れてこられた。

現地集合だったために私はそれを知らなくて驚いた。

今朝会ったときは“いってらっしゃい”と見送りの言葉をかけられたから。

誘いたい気持ちと、誘えない気持ちがぶつかりあって、誘えない気持ちが勝ってしまったから。

一緒にいたいけれど、まだサークルに入るかどうかも決めていない一護を誘ったら、もう入るしかなくなる。

先輩たちはそういう人たちだ。

だから、自分では誘えなかった。

それなのに、乱菊さんの誘いにのったのだ、彼は。

それが少しだけ嫌な気持ちにさせる。

誘えなかったのは自分なのに。


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