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□届く距離
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「オハヨーゴザイマス。黒崎、入ります」

「おはよ〜ございます。黒崎サン。おやあ、ご機嫌ですねえ」


いつものようにへらへらと笑う店長のそばを通りすぎて店内へと向かう。

まだ準備中の“浦原”は静かだ。


「なんじゃ、儂には挨拶なしか」

「おはようございます、夜一さん」


満足そうににかりと笑った彼女はカウンター席に座っている。


「今日は、忙しくなるまで厨房お願いします。フロアは夜一さんにでてもらいますから」

「なんじゃ、喜助。儂を使う気なのか。オーナーじゃぞ、オーナー」

「一応、アタシ店長ですから従ってもらいますよ」


さりげなく、夜一さんの隣に立った浦原さんはことりとコップを置いた。

中身は並々と注がれたミルク。


「来い、一護。儂の相手をせい」


開店前の掃除をはじめた俺を呼ぶ。


「夜一さん、俺忙しいんスけど…」

「掃除なぞ、喜助に任せておぬしはここに座れ」


半強制的に隣に座らされた。


「して、一護」


人の悪い笑みを浮かべて聞いてくる。


「ぺろっと吐いてしまえ」


浦原さんもニタニタと笑っている。


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