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□歩いたその先には
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今日は二週間ぶりに一護と逢うはずだったのに。
なのに。
目の前の光景から目を背けたいのに背けられない。
一護の家に向かう途中の信号待ち。
道の向こうに一護がいたから手を振って知らせようとした。
けれど、あげかけた手はすぐに下ろした。
隣には見知らぬ女性。
一護にもたれるように腕を組んで歩いている。
彼は嫌がるそぶりをひとつもしていない。
笑って楽しそうにしている。
向かう先は駅のよう。
どうしよう。
帰るのなら、彼らと同じ駅に向かわなくてはならない。
でも、このまま一護の家に行くのも嫌だ。
逢いたくない。
逢ってしまったら聞いてしまう。
ただの知り合いかもしれないのに。
ただの友人かもしれないのに。
ただの…。
考えたくないことが浮かんで、思いきり方向転換する。
駅とは真逆の住宅街へと向かう。
歩くという行為に没頭して、ひたすら歩を進める。
何も考えない。
考えてしまったら負けだ。
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