V

□蜜月酒
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人の気配を感じて一護が振り返るとそこには一人の女性が立っていた。


「やっほー、一護。これお土産〜。あれ、朽木はいないの?」

「ら、乱菊さん。何しに…」


引越しの荷解き途中で散らかった室内にずかずかと遠慮なく踏み込んだ松本乱菊は唯一座れる場所が確保できているソファにかけた。


「んー、ちょっとね〜。朽木は、どこ行ったのよ」

「ルキアは買い出しに。なんか足らないのがあるって」


キッチンへと立って、湯を沸かしはじめた一護。


「ちょうど良かったわ」

「何がっスか?緑茶とコーヒーどっちのが…」

「コーヒーがいいわね。こっち来た時ぐらいこっちにしかないもの飲みたいし」


一護にみなまで言わせずに、自分の主張をした金髪の美女は確かめるように室内を見回し、奥へとつながる廊下に興味を示した。



ダンボールの中からマグカップを探し出した一護が自分用にもコーヒーを淹れてソファに目を向けると、客人は姿を消していた。

嫌な予感がして、二人の寝室にしている奥の部屋の様子をうかがうと案の定、興味津々の彼女があっちこっちと探っている。


「人ん家で何してるんですか、乱菊さんっ!!」

「ほらあ、アンタたち新婚でしょ。だから面白いことないかなあ、なんて」


満面の笑みをたたえる乱菊に溜め息をついて、一護はうなだれた。

彼女の上司である日番谷冬獅郎に心底同情を覚えた。

自由すぎて困ると。


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