V
□月と橙と。
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「学生はしっかり学生をしろ」
「おー」
なんともやる気のない声だ。
おそらく家からはこっそりと抜け出してくるのだと思う。
家族に心配をかけたくないから、こっそりと、そっと。
彼から向けられる言葉からそれはわかる。
家族をとても大切にしていることを。
「いっつも思うんだけど、ルキアはこんな時間まで起きててへーきなのかよ」
「私か?まったく差し支えぬな」
仕事柄、自分のペースさえ守れば時間はほとんど関係がない。
「貴様は遅刻などしておらぬだろうな」
「してねーよ。あいつらに嫌味言われる口実与えてたまるか」
こんなにきれいな色をしている髪に文句をつける輩がいるらしい。
まったくもって理解に苦しむ。
美しいものは美しい、きれいなものはきれいで良いではないか。
「いじけるなよ」
「いじけてなんかねえよ。ルキア、お菓子ちょーだい」
ぐうと鳴った彼の腹に笑うと起き上がった彼が両手を差し出してくる。
まったく、どこのガキだ。
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