V
□蜜月酒
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向かいあって座れば、愚痴とも自慢ともとれるような話を繰り広げていく。
一護には、口を挟む余地はないし、何の話かもわかっていない。
「…ということで、これあげるわ。大事に飲んで頑張ってね〜。ちゃんと毎日飲むのよ」
手渡されたのは酒瓶。
茶色の瓶のために、中身の色まではわからない。
「ありがとーございます」
礼を言った一護を見て面白くないといった表情の彼女。
べちんとそのオレンジ頭を叩いて、悪戯な笑顔で言った。
「ただいま」
「おかえりー。遅かったな」
玄関へと身体を向け帰宅を告げた妻に彼は声を返した。
「すまぬ。買い物しすぎた。誰か来ていたのか?」
テーブルには二つのマグカップが並んでいる。
ひとつは一護用の、もうひとつは来客用の。
「ああ、さっきまで乱菊さんが来てた。それ、土産だって」
テーブルの端に置かれている包みを示した。
「うむ、一護は何を飲んでいるのだ?」
ソファに身を沈めている一護の手の中には、グラス。
透明なグラスの中身は、彼の瞳の色によく似た蜂蜜色。
来い来いと手招きされてルキアが近づくとひょいと持ち上げられて、抱きこまれた。
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