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□ある雪の日の話
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隊舎に着くと私たちが来るのを今か今かと部下たちが待ちかまえていた。
代表してなのか三席が「雪合戦」を提案してきた。
すでに組み分けも終わっているようで白と黒の鉢巻をそれぞれが巻いている。
それぞれの対象は一護と私が据えられるようだ。
「隊長も副隊長もよろしくお願いします。負けた方は今日一日勝った方の言うことすべて聞くことになっていますから」
至極楽しそうに笑んだ三席は白の鉢巻をしており、私と共に戦う白組。
若干ひきつったような顔の一護が「負けねえぞ」と言ったから「望むところだ」と返して盛大な雪合戦がはじまった。
ぎゃいぎゃいわーわーと子どもみたいにはしゃぐ部下たち。
そういう私もわくわくとした心持ちで雪玉を投げつける。
もちろん敵である一護に全力で。
一護らしいといえば一護らしいのだが、先陣切って乗り込んできている。
結局、午前中いっぱい戦った結果は白組の勝ち。
一護たちの敗因は間違いなく一護が一人で突っ走り、途中で力尽きたことだ。
わらわらと四方を囲まれて雪玉をぶつけられる一護には笑わせてもらった。
皆も遠慮なくぶつけていたし。
「何笑ってんだよ」
「いや、貴様のやられっぷりを思いだしたらな…」
脇腹がつってしまうのではないかと思うほどさきほどから笑っている。
「あーもう、あいつらぜったいに日頃の恨みこめて投げてただろ」
「そんなことはないだろう、隊長と遊べて楽しかったと言っておったぞ」
「うわー、なんだそれ」とげんなり顔の一護を見上げる。
「なに?」
「うむ。あの、だな」
「おう」
「身体が、冷えて寒い」
火鉢は目の前にあるけれど、勝者なのだからワガママしてもいいだろう?
(終)