V
□そばにいてほしい彼女/探してしまうヒト
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六冊ほど本を選んで席へ戻る。
それからは試験勉強に集中した。
どさりと何かが落ちた音がして、そこで集中力が切れた。
二つ隣の席の人が持っていた本を手からすべり落としたらしい。
視線を向けるとぺこりと謝罪のお辞儀をされた。
時計を見ると昼をとっくに過ぎていて、それを意識した途端、ぐうと腹が鳴る。
どうすっかな。
バイトまでにはまだ時間がある。
勉強もキリのいいところまでは終わった。
外に食べに出て戻ってくるか、このまま帰るか。
片づけながら考えるが、どちらも決め手にかける。
最後の一冊を元あった場所へ返すと、何かが引っかかった。
後ろから髪を引っぱられるような感覚。
身体をゆっくり反転させて、見逃すことがないようゆっくりと棚に視線を向ける。
その本だけ、他の本よりも存在感があった。
たまにあること。
本に引き寄せられる。
そして、その本は俺を虜にする本だ。
食べることも寝ることも忘れて、一気に読んでしまう本。
こういう本に出会えることはうれしいことだけれど、どうして“今”なんだ。
借りてしまったら読んでしまう。
けれど借りないという選択肢はない。
返却までの期間は二週間。
試験が終わってから読んでも返却までには十分日がある。
でもきっと、今日読み終えることになりそうだ。
読み終わるのは夜中になる。
すぐには寝付くことはできそうにないからそのまま勉強でもしていよう。
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