V

□噂の彼女/取りに来たヒト
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「鈍いなあ。まあ、しかたねーか。高校ん時はまったく興味無しだったもんな。ようやく訪れた春、大事にしろよ」

「え、あ…?ハイ」


なんだかわからないが心配されていたようなので頷いておく。


「師匠から聞いたときは驚いたけどな」

「…何聞いたんスか?」

「そりゃおまえの彼女候補の話。つーか、相手の彼氏候補になったおまえの話が正確か」


俺の脳はさっきからおかしくなっているみたいだ。

日本語なのに意味がわからない。

今年は暑い暑いって言われているけど、とうとう俺も夏バテしたんだろうか。

彼氏候補って…。


「何固まってんだよ。おい、男が頬染めたって気持ち悪いだけだっての」


そんなこと言われたってどうにもできない。

海燕さんが悪い。

俺は彼女が好きで、今すぐ付き合いたいとかはない。

いや、ないって言ったら嘘になるけど。

大事にしたくて、ぬるま湯に浸かっていたくて。

ただ壊したくないだけかもしれないけど。

それでも、他の誰かからそういう風に見えることがうれしい。

恥ずかしさとうれしさが同居して顔がにやける。


「おや、一護くんどうしたんだい?」


気配も感じさせずに室内へとはいってきた浮竹さんが楽しそうに言った。


「師匠、こいつどーにかしてください」

「な、海燕さんが悪いんでしょーが」

「もしかして朽木の話でもしていたのかな。可愛いもんなあ、朽木」


にっこりと笑った浮竹さん。

それにのっかったのは海燕さんで、しゃべらされるのは俺だ。

塞いでおきたい口は三分もしないうちに開くことになる。



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