V

□伝えられない彼女/好きなヒト
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「好きだ」って伝えたい。

それでもっと触れあいたい。

でも…怖い。

弱い自分が浮き彫りになる。

断られたくないと、拒まれたくないと。

だったらこのままでいい、と。

二人で逢って、好きな本や作家の話で盛り上がって、勉強して、二人で出掛けることができる今のままでいい。

失うかもしれない賭けになんかでられるわけがない。




彼女には余裕のあるフリをして接しているけれど、内心は心臓がバクバクなんだ。

年上の余裕なんてどこにもなくて。

彼女に向けられる男どもの視線をにらみ返す。

威嚇して、遠ざける。

俺のだって、誰にも渡さないって。

どんどん溺れていく。

彼女のことを想わない日なんかどこにもない。

彼女と出逢う前の生活になんか戻れない。

俺の心は彼女でいっぱいになっている。

日に日につよくなる想いにうれしくなりながら、怖くなりながら。

どうしたら少しでも長く彼女と一緒にいられるかを考える。

どうしたら笑顔を見せてくれるかを考える。


甘く至福な時間を長く、長くと。



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