V

□知られているヒト/やわらかい彼女
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ネリエル先生はアメリカから日本へ来て四年目になるらしい。

日本文化に触れるために日本に来たと初めての授業の時におっしゃっていた。

乱菊先生と仲がいいらしく二人で一緒にいる姿をよく見かける。

二人が並ぶとかなり迫力があり、女性としての魅力にあふれている。

すこしだけ、うらやましい…。

昼食を早々に済ませ職員室に向かうとネリエル先生に笑顔で迎えられた。


「いらっしゃい、クチキさん。このプリントを、そーですね。次の授業までに」

「は、はい」

「ダイジョブ、今日のテストの復習に近いデス。誰かに教えてもらうのもアリ。えーと、イチゴに教えてもらうのもO.K.」

「い、ちご?」


いちごに教えてもらう?


「そう。…ランギク」


通りかかった乱菊先生に声をかけたネリエル先生は英語での会話をはじめたので私にはさっぱりわからない。

話し終えた二人は笑っていて、その笑顔の理由がわからず困惑してしまう。


「ネリエルは、一護に教えてもらいなさいって」

「黒崎先生に?ネリエル先生も黒崎先生を知っているのですか?」

「ランギクから聞いただけ。クチキさんと、ナカヨシなイチゴ」


完全に発音が果物の“イチゴ”。


「そうだ、朽木。あんた、たまには一護にお礼しなさいよ。ほっぺにちゅって」

「そ、そんなことできません」

「アメリカでは親しい間柄ではよくする挨拶よ、ね。ネリエル」

「ええ。嫌がるヒト、いません」

「ぜーったいよころぶから、騙されたと思ってやってみなさい」


頷かないといけないような気がして、よろこんでもらえるのだと信じて、行動に移した自分が恥ずかしくてしょうがない。

もう、先生に会わせる顔がない。

どうしよう…。



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