V

□食べてくれるヒト/つくってくれた彼女
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「大丈夫だろ」

「だいじょうぶ?」

「おう。けっこう俺、量食うんだ。一時期は三人前ぐらい平気で一食で食べてたし」


そんなに食べられるものなのだろうか。

ああ、でもそうかもしれない。

部活をしている同じクラスの男子はお昼にそれはもうこれでもかというほど食べている。

先生にもそんな時期があったのか。

見てみたかったな。


「朽木、荷物貸して」


ひょいと奪われたのは重箱の入ったトートバック。


「ありがとう」

「おう。じゃあ、行きますか」


先生の横に並んで歩き出す。

近くの公園までをてくりてくりと。

午前中は木陰で英語の授業。

先生と英語だけで会話をする。

すごく、苦手だ。

単語が思いつかなくて、思わずジェスチャーになるのを先生が意を汲んでヒントを出してくれる。

たどたどしい発音も、先生と繰り返し声に出すことで英語っぽく発音できるようになった。

正午の時報が鳴ったところで授業は終了し、お昼になる。

先生が持参したレジャーシートを芝生の上に広げる。

重箱を開けると、先生の歓声が上がった。

よかった、よろこんでくれている。


「食っていい?」

「どうぞ、召し上がれ」


朝、がんばって起きてよかった。

四時半起きだと言ったら先生に笑われてしまうだろうか。

いや、きっと「がんばったな」って頭を撫でてくれる。

撫でてほしいな。

それで笑顔を見せてほしい。



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