V

□視線のあうヒト/独占したい彼女
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何事もなく授業は終わり、桃と並んで教室へと歩いていると前方がなんだか騒がしかった。

昼休みに突入したからだろうか。

いつも購買は混んでいて一種の戦いの場であるから。

でもなんだか違う気がする。

購買は一階でここは三階。

桃も「なんだろう」と不思議そうだ。

二階の教室へ戻るために階段に差し掛かると、ひそひそ声ときゃあきゃあと騒ぐ声がいっそう響くようになった。

ほんとうにいったい何事であろう。

女子生徒が幾重にも重なるように輪を作っていた。

中心に何があるのかは私からは見えない。

さしたる興味もなかったのは桃も同じようで。

声をかけられなかったら素通りしていた。

黒崎先生の声が聞こえたような気がして立ち止まる。


「ふぇ?」

「くーちーき。待てって」


人波をかきわけるようにこちらに向かってくるのは先生で。


「せんせ?」

「昼飯一緒に食わね?」


その提案は脳内をぐるりと巡ってから浸透した。


「おひる?」

「そ。ダメか?」

「え、や…」


なんと返事をしたらいいのか困っていると桃に背中を押された。


「いってらっしゃーい。午後一は数学だからちゃーんと戻ってきてね」



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