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□視線のあうヒト/独占したい彼女
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何事もなく授業は終わり、桃と並んで教室へと歩いていると前方がなんだか騒がしかった。
昼休みに突入したからだろうか。
いつも購買は混んでいて一種の戦いの場であるから。
でもなんだか違う気がする。
購買は一階でここは三階。
桃も「なんだろう」と不思議そうだ。
二階の教室へ戻るために階段に差し掛かると、ひそひそ声ときゃあきゃあと騒ぐ声がいっそう響くようになった。
ほんとうにいったい何事であろう。
女子生徒が幾重にも重なるように輪を作っていた。
中心に何があるのかは私からは見えない。
さしたる興味もなかったのは桃も同じようで。
声をかけられなかったら素通りしていた。
黒崎先生の声が聞こえたような気がして立ち止まる。
「ふぇ?」
「くーちーき。待てって」
人波をかきわけるようにこちらに向かってくるのは先生で。
「せんせ?」
「昼飯一緒に食わね?」
その提案は脳内をぐるりと巡ってから浸透した。
「おひる?」
「そ。ダメか?」
「え、や…」
なんと返事をしたらいいのか困っていると桃に背中を押された。
「いってらっしゃーい。午後一は数学だからちゃーんと戻ってきてね」
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