V
□キミの味方
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思っていた以上にルキアの身体は軽くて。
もう離せないと思った。
誰に何を言われようとも。
ルキアだけは離さない。
「あ、の…ありがとう…」
冷えた身体があたためられたルキアの頬は薄くピンク色に染まっていた。
「悪いな、着替えなくて。我慢してくれ」
全身ぐっしょりと濡れていたルキアは一護の部屋に着くなり、浴室に追いやられそのままバスタイムとなったのだ。
代わりの着替えがあるはずもなく、今ルキアは一護のシャツを着ているだけ。
シャツ一枚でもルキアには大きすぎるらしく肩はずり下がり、裾は膝丈。
「い…一護も風呂に入らねば、風邪を引く」
「あー、俺は平気」
「だ…駄目だ。一護が、風邪を引いてしまうのは嫌だ」
くんっと服の裾をつかみ、見上げてくるルキアに一護はたじろぐ。
上気した頬に大きな瞳に見つめられて自分の心配をしてくるルキアに一護の胸はドキドキと鼓動をはやめていった。
「じゃ…あ、入る」
入ったけれども、ルキアがいなくなってしまうのではないかという不安からカラスの行水の速さで一護は出てきた。
「ちゃんと、あったまったのか?」
「あったまった。おまえ、髪濡れたまんまかよ」
一護は頭にのせていたタオルをルキアにのせて、そのままわしわしと撫でるように拭いた。
十分に水分を拭きとってからルキアを解放した。
「飲み物、ココアでいいか?」
「ここあ?」
「甘いやつ」
「うむ。…甘いのは好きだ」
小さなキッチンで牛乳を温め、カップにココアの粉と砂糖を入れる一護をルキアは興味津々に見つめていた。
「うまいうまい」と絶賛するルキアに照れる一護はルキアに言ってみた。
「ずっとここにいてほしい」
「…いち、ご?」
「行くとこないならここに居ればいい。ルキアが好きだ」
「だが…。私は一護の敵だ。それがかわることはない」
「んなことない。俺はもうルキアの敵にはならない」
「何を言って…」
「ルキアの敵にはもうなれない。だって、俺はルキアの味方だから」
やさしく笑う一護にルキアは戸惑った。
一護は私が好きだという。
私には“好き”がわからない。
一護が私の味方?
敵同士なのに?
どういうことなのかわからない。
でも一護は嘘を言っていない。
心の底からそう言っている。
それだけはわかる。
でも私には何もない。
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