V

□キミの味方
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爪がたてられた。
でもやめることなんて無理だ。
ずっと欲しかった。
彼女の存在すべて。




「やあ…はなっ……せ」

「無理。俺、好きなんだ」


決して離すまいとした男の力に勝てるはずもなく、少女は自分を好きだと告げた男を見つめた。


「貴様、一体何者だ。私をあの名で…」


ひどく苦しげに顔を歪めた彼女の言葉を塞ぐように彼は名乗った。


「一護。俺は黒崎一護だ」

「いち、ご…」

「そう。一応、ブラック」

「離せっ!いやだ…触れるなっ!!」


一護は彼女の力いっぱいの抵抗もものともせずに、その腕をゆるめることもしなかった。



こやつは敵だ。
戦うべき相手だ。
倒す相手だ。
倒す…?
何のために?
誰のために?
私はひとりぼっちだ。
もう、あそこに私の居場所はないのに。
わからない。
…わからない。
私はこやつの敵なのか?



「おまえの名前、教えてくれよ」


やさしい声が彼女に降った。

混乱した頭の中で、求められた答えを彼女は答えた。


「ルキア、だ」

「ルキア。身体冷えちまってる。行こう」

「どこに、だ?私をとらえて拷問にでもかけるのか?」

「しねえよ、そんなこと!!」


怒気に気をされたルキアは、一護のその瞳のつよさにも驚いた。

まっすぐに見つめられていた。

自分だけを、まっすぐに。


「では、どこに?」

「俺ん家」

「なぜ…?」

「だから風邪引かせたくないんだよ。それにあんなつらい表情をさせたままほっとけるわけねえだろ」

「わっ…あ、何をする」


軽々と抱き上げられたルキアは、歩き出した一護に何か言おうとしたが口をつぐみ、服越しに伝わる彼のあたたかさに安堵した。



あたたかい。
こんな風にあたたかいのは久しぶりだ。
安心する。
今は、今だけはこのあたたかさだけを感じていたい。



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