V
□キミの味方
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私はいったい、どうしたらいいのだろう。
何も、わからなくなってしまった。
どうしてなのだ?
わからない、何もわからない。
雨さえまったく気になりもしないかのように宙を見上げたまま、少女は土砂降りの雨の中佇んでいた。
生きる意味も居場所も信じることも、彼女は何もかも捨ててしまったかのよう。
「おい」
かけられた声にすら反応を返さず。
「聞いてんのか?」
肩をつかまれ、ぐいと引っぱられてもその瞳は雨を映したままだった。
この雨の中、濡れている人物を見つけ傘を差しかけた男は彼女の顔を見てハッとした。
しかし、それだけ。
彼女が逃げてしまわないように腕を掴みはしたものの、仲間を呼ぶでもなく、変身するでもなく、ただ彼女に寄り添うように隣に立った。
俺たちは敵同士。
だけど、戦いに赴くたびに思ったんだ。
また逢えたと。
傷つけたくないと。
もっと知りたいと。
好きだと。
「ハニー・デビル」
そう彼女を呼んだ瞬間、慄くように怯えるように震えた彼女の身体をつよく抱きしめた。
男は小柄な彼女を抱きしめ、屈み、その耳元で甘くささやいた。
一言。
「好きだ、おまえが」
腕の中でもがき、逃げようとする少女の顎に手をかけて男は小さくやわらかな唇を覆い、塞いだ。
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