V

□月見と白玉と。
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「なぁ、ルキア。今日は月見じゃなかったのかよ」

「…ちゃんと、あるだろう。少し静かにしていろ」


自分より年上には見えない彼女は歴とした成人女性らしい。

本人が言ったことだから信じるしかない。

俺よりもちっさい彼女は今、朝から読んでいるという本に夢中でロクに相手もしてくれない。

いつもよりはやく来たのに。

月見をするからなと、言ったのは彼女なのに。

十五夜の時はちゃんとしたものが用意できなかったから十三夜は月見らしい月見にしようと楽しみにしていたのは彼女だったはずなのに。

俺の方が楽しみにしていたみたいだ。

確かに供えられているものは彼女が用意したものだけれど。

構ってほしいというか、俺のことを見てほしい。

まだ欠けた部分のある月は天空に座してあたりを照らしている。

明るいといえるぐらいの光量があるため、彼女はなんなく本を読みすすめている。

暇、だな。

本来の目的の月見は彼女と二人でしたかったけど、先に一人ではじめることにしよう。

いつだったか、同じように本を読みすすめる彼女を眺めていたら怒られた。

気が散るから見るなと言って、あの時は背を向けられたんだ。

隣にいるのに、背中を向けられたのはかなりショックだったことは彼女には秘密にしておく。

もし、知られたらぜったいに子ども扱いされることは目に見えているから。

今だって、そうなのにこれ以上ガキ扱いはごめんだ。

魔法瓶には熱々のコーヒーが入っている。

俺用にと彼女が用意してくれるもののひとつ。

カップに注いで口をつけると香ばしいうま味が口内に広がる。

うまい。

だいぶ夜は冷えるようになってきたからあったかい飲み物はうれしい。



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