V
□そばにいてほしい彼女/探してしまうヒト
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そばにいてほしい彼女
いない…か。
約束の日じゃないし、待ち合わせをしたわけじゃないからいるはずもない。
だからこの気持ちは少し変だ。
淋しいなんて。
一緒にいることなんてほんのわずかな時間なのに彼女と話すようになってから図書館という場所は思っている以上に特別な場所になっている。
彼女と逢うことのほとんどがここだから。
初めて見かけたのも、話しかけたのもここだからだ。
想い出の場所といっても差し支えないのかもしれない。
ここ最近はずっと一緒にいたから隣にいるのがあたりまえだと思っているのだ。
俺の脳みそは相当単純になっている。
“図書館=彼女が居る”になっているんだから。
溜め息をひとつついて奥の個室席へと向かう。
図書館内でも一段とひっそりとしている区切られた部屋は勉強するにはもってこい。
辞書類も完備されているし、何より静か。
おまけに涼しい。
試験勉強するにはもってこいの場所。
席の確保だけして、参考図書を探しに館内を移動する。
いつもよりにぎやかなのは夏休みに入っているからのようだ。
児童図書のあたりは小学生ぐらいの子どもたちが司書と思われる職員に自由研究のことやらどの本が面白いやらを聞いている。
俺も一週間の試験期間が過ぎれば夏休みに入るけど、入る前が忙しすぎる。
レポートが三つ残っているし、試験は論述ばかりだし。
頭に叩き込まなきゃいけないことが多すぎる。
夏休みに何しようかなんて考えている暇はない。
暇はないけど、彼女とどこかへ行ってみたいと思っている。
去年みたいに花火大会とか、海もいいな。
って、ダメだダメだ。
そういうことを考えるのはレポートも試験も終わってから!
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