V

□噂の彼女/取りに来たヒト
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噂の彼女



全国への切符を手にした後輩たちは午前の練習を終え帰っていった。

今日の午後は休みで、自主練も禁止だと言い渡されている。

久しぶりの休みに彼らは溜まっているだろう夏休みの課題を片付けるのだろうか、それとも遊びに行くんだろうか?

きっと後者だろう、俺もそうだったから。

懐かしんでいると不意に頭を鷲掴まれた。


「なーに黄昏てんだ、一護」

「あー、やめてくださいよ。海燕さん」


わしわしと楽しそうに頭を掴んでいる。


「飯時に暗い顔してんのが悪いんだろ」


冷房の効く国語科準備室で昼飯を食べることになっていた。

しかも海燕さんの奥さんの手作りらしい。

浮竹さんも海燕さんも大絶賛しているから相当美味いんだと思う。

二人はまずいものはまずいといえる人だから。

海燕さんは歯に衣着せずに一刀両断するし、浮竹さんは直接的な言葉では言わないけどアドバイスと思われる改善点を丁寧にあげていく。

合宿中にカレーを失敗した時はそれはもう大変だった。

過去に思いを馳せていると今度は乱雑に頭を撫でてくる。


「俺の話、聞いてねえだろ」


間近に迫った海燕さんの顔に驚いて身を引くも、背にあたるのは椅子の背もたれで逃げることはかなわない。


「すいません。もっかいお願いします」

「だーかーらー。この間からおまえが楽しそーにしゃべってる娘とはどーなってんだって聞いてんだよ」

「は?」


言ってることはわかる。

彼女のことを言っているんだ。

どうなったってどういう意味だかがわからない。


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