V

□伝えられない彼女/好きなヒト
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伝えられない彼女



彼女は気づいていない。

周囲の目というものにまったくこれっぽちも、ぜんぜん。

自分が他人にどう映っているかなんて。

女子高校生の平均よりも小柄といえる彼女は中学生くらいに見える。

私服だとなおさら。

そんな小柄さを彼女は少し気にしているらしく、間違われる度に拗ねている。

毎回、その膨らんだ頬をつつきたい衝動に駆られるが何とか押さえ込んでいた。

それはもう必死に。

そんな風に気軽に触れられる関係じゃないんだって。

それなのに、いつの間にか彼女を独り占めしたくなって、俺のだって言いたくなった。

嫌がらないのをいいことに頭を撫でたりとか手をつないだりとか。

人目のあるところで、見せつけるように。

恋仲ではないけれど、俺は彼女が好きだから。

独りよがりだってことは重々承知してはいるんだ。

一方的な独占欲。

本人の意思確認もしないで。

好きだから何をしてもいいっていうことにはまったくない。

まったくないけど彼女を知りたくてたまらない。

それはこれまで興味がなかった分反動が大きいのかもしれない。

中学も高校も部活第一で生活していた。

異性に惹かれるってことがなくて、その手の話は苦手だった。

誰が誰を好きだとか、モテたいだとか。

だから好きな相手の気の引き方なんかわからない。

考えても無意味で、動いた身体は触れることだった。

話をするだけじゃ、勉強を教えるだけじゃもの足りなくなって。

華奢な身体に触れた。

艶々とした黒髪を撫でたり、小さな手をつないだり。

抱きしめたり、指を絡ませてみたり。


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