黄蛙
無機質な空間。体に悪い光を浴びる体はいつになく項垂れていた。
「あー…新学期面倒臭い!」
それはこの部屋の主では無くその隣りで叫ぶ少女だった。
黄色い主はその叫び声をこれまた気怠そうな表情で聞き流していたのだが。
「人ン家で叫ぶんじゃねェ。迷惑だ出てけ。」
しっしと軽いジェスチャーを見せると彼・クルルはその手を再度キーボードに移す。
それでも彼女は一ミリたりとも動こうとはしない。その上一人で何かを語り出した。
「まあさ、学校始まれば友達にも会えるよ。規則正しい生活も出来るし部活も楽しい。」
吐かれた溜息に何処が面倒なんだという突っ込みを喉の奥に留めるクルルは苛々しながらも仕事を続行する。
次に発せられた言葉を耳に入れる数秒前まで…。
「でもさ、学校始まったらクルルに会える時間が少なくなる…」
また伏せてしまった彼女の横で数秒前まで苛々していた彼が今、口角を釣り上げている事なんて彼女は知らないだろうに。
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